ライカレンズ × 写真家 連載企画 Vol.1

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50mm(100mm相当)/マニュアル露出(F4、1/500秒)/ ISO 400/ WB:曇天
海ノ口駅で出会った中学生。カメラとレンズ双方の手ブレ補正機能は有効で、とっさのシャッターチャンスに強い。歪曲収差が非常に少なく、鉄道や駅舎のような直線的な被写体にも強い

デジタルカメラマガジンで掲載された誌面を再構成しています

久保田 敦

1977年、長野県生まれ。九州産業大学芸術学部写真学科卒業。会社員、フリーカメラマンを経て2001年レイルマンフォトオフィスに入社。現在はフリーになり『鉄道ジャーナル』(鉄道ジャーナル社)を中心に活動のほか、一般誌でも活躍中。日本写真家協会日本鉄道写真家協会会員

【源流/JR大糸線 海ノ口駅】
祖父が駅長をしていた海ノ口駅は、木崎湖を望むことができる。かつて、冬になると白鳥が飛来し、仕事の傍らでその数を数えるのが日課だったという。現在は無人駅だが往時の姿を色濃く残している

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雄大な山並みに見守られた春旅の記憶を訪ねて

長野県松本市に生まれた私には、風景の中に北アルプスがあるのが当たり前だった。もったいない話だが、毎日のように見える山に特に感情を抱くことはなかった。その後、大学入学と同時に信州を離れ、知らない土地での生活に喜々としていた。しかし、久しぶりに帰郷した私は、その山容に驚愕することになる。凛とそびえ立つ山々の美しさに圧倒され、故郷に素晴らしい景色があることに初めて気付いたのだ。

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100mm(200mm相当)/マニュアル露出(F14、1/500秒)/ ISO 200/ WB:晴天

白馬三山をバックに走る大糸線のハイライト。可能な限り望遠にして圧縮効果で山の迫力を出し、線路を見上げる位置に構えて列車が山登りをしているようなイメージで捉えた

そんな美しい信州の山々を車窓から堪能できるローカル線が、今回訪ねた大糸線だ。長野県の松本駅と新潟県の糸魚川駅を結ぶ路線で、かつて国鉄職員だった祖父が途中の海ノ口駅で駅長をしていた。ある時、祖父がこの大糸線を走るイベント列車の切符を手に入れてくれた。春まだ浅い3月、残雪の山を見ながらの列車の旅がとにかく楽しかったのを覚えている。小学生だった私は、それ以降鉄道の魅力にどっぷりはまることになる。これが、私が鉄道写真家を志した原点といえる。実際に鉄道写真を撮り始めてからもよく通った大糸線は、私のルーツのような場所だ。

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 今回の大糸線の撮影はLEICA DGVARIO-ELMARIT 50-200mm / F2.8-4.0を携えて向かった。朝、鳥の声に誘われるように撮影地に立つと、昇ったばかりの太陽を浴びて白馬三山が神々しく輝いていた。その迫力と空気感を伝えたくてズームリングを望遠側にシフトして山容を圧縮する。ライカ基準を満たした高解像度、高コントラストな描写が、列車の金属感はもとより、遠く山肌の細かい部分までも素直に写し撮る。強い朝日の中での撮影だが、コーティングがしっかりしているため、どこまでもクリアな描写が維持される。背面モニターには私の心に今も残る、かつての春旅の記憶が鮮明に再現された。 そびえ立つ山々は、昔と変わらず私を見守ってくれているようだ。快晴に恵まれた撮影日は、鉄道写真家として旅を続けるために祖父がくれた、もう1枚の切符だったのかもしれない。

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253mm(506mm相当)/マニュアル露出(F7.1、1/400秒)/ISO 200/ WB:晴天/DMW-TC14使用
アップで捉えた特急あずさ号。小さくて軽い1.4倍のテレコンバーターを使用可能で、マスターレンズの性能そのままに焦点距離を伸ばせる。カメラバッグに忍ばせておきたいレンズの1つだ

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56mm(112mm相当)/マニュアル露出(F4.5、1/4,000秒)/ ISO 200/ WB:晴天
線路を見守る道祖神。明るい開放F値はボケを利用した作品制作には欠かせない。1段ほど絞ったが、円形虹彩絞りの美しいボケが、ほのぼのとした空気感を演出してくれた

使用機材

DC-G9

電子シャッターでの約60コマ/秒連写や高速なAF性能など、G9PROは鉄道写真を撮る上で十分なポテンシャルを持ったカメラだ。EVFも120fpsの高フレームレートで、動く被写体でも心強い。

※撮影条件によっては60fpsで表示されます

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LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.

F2.8-F4の明るさを持ちながら手持ちでも苦にならない大きさと軽さは、撮影現場のフットワークを軽くしてくれる。キレのある素直な描写が印象的で、独自のナノサーフェスコーティングによってゴーストやフレアがかなり低減されるので、逆光条件でも安心して撮影できる。

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